あるクライアント様から、従業員の採用に際して「最初の契約は1年間の有期雇用契約とし、その当初6か月を試用期間としたいのだが可能か?」というご質問を受けました。
結論から申し上げると、有期雇用者に対し試用期間を設定することが直ちに法違反になるものではないが、試用期間が長期雇用を前提とするなかで本採用する前に正社員等としての適格性を判定するための期間であることから、有期契約において試用期間を設定することはなじまないと言えます。
試用期間中の契約関係に関しては、「解約権留保付労働契約」がすでに成立しているものと解されることが一般的です。
難しい言葉ですが、解約権を留保した(つまり、何かしらの事情があった場合にその労働契約を解約することができる)労働契約が成立しているということになります。
そして、その解約権は、通常の解雇より広い範囲における解雇の自由が認められてはいるものの、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合に行使できるものとされています。
つまり、よほどの事情がないと本採用拒否はできず、「お試し期間なのだから、適性がないとわかったら本採用は見送ろう」といった安易な考えは通用しないということです。
さらに、有期雇用契約は契約期間途中での解約が困難です。
例えば1年間の雇用契約を結びその当初6か月を試用期間とした場合に、「思ったような能力がなかった、仕事のミスが多い」という理由で本採用を拒否してしまうと、1年間という雇用契約の期間が守られないことになり、トラブルに発展するリスクがあります。
正社員として長期雇用する前に適格性を判定したいということであれば、最初の契約を3か月~6か月程度の有期雇用とし、当然に契約更新するものではなくいったん有期契約満了時には雇用契約が終了することを明らかにしておくことが大切です。
契約書の記載内容に注意する必要がありますので、トラブル防止のためには専門家である社労士のアドバイスを受けることをお勧めします。