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移動時間は労働時間といえるか?


労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間をいいます。移動時間が労基法上の労働時間といえるかは、使用者の指揮命令下にあると評価できるかどうかという点が問題になります。

行政解釈上、「移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものである」との解釈が示されています(平成16年8月227日基発第0827001号)。この通達を踏まえれば、使用者が社外業務を命じ、当該業務に従事するために必要な移動について、時間や方法を指定し、移動中も業務に従事する等、社員にとって移動時間を自由に利用できない場合には、使用者の指揮命令下にあると評価でき、移動時間も労基法上の労働時間として扱う必要があるでしょう。

これに対して、移動時間が長時間であり、当該移動時間を自由時間として利用できる(スマホを見る、仮眠をとる等)のであれば、場所的な拘束はあるものの、使用者の指揮命令下にあるとまでは評価できず、労働時間として扱う必要はないということになります。この場合は訪問先で実際に業務に従事した時間のみを労働時間として扱うことになります。

他方、移動時間が短い場合や、電車などで乗換に要する時間が多い等、実質的に労働者が自由に利用できる時間がないと評価することができるのであれば、社外業務に付随する時間として労働時間として扱う必要があります。

また、業務に要した時間を把握することが困難であるという事情があるならば、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外業務に従事した場合で労働時間を算定し難い場合として事業場外労働の規程を用いて対応することも考えられます。この場合、社外業務を遂行するために通常必要とされる時間を労使協定で定め、当該時間労働したものをみなすこともできます。

ただし、事業場外みなし労働時間制は、労働時間を算定し難い場合であることが必要であり、事業場において訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後事業場に戻る場合には、労働時間の算定が可能であるとして、みなし労働時間制の適用はないとされていますので(昭和63年1月1日基発第1号)、事業場外みなし労働時間制の適用が可能な場面化については実態を踏まえた検討が必要ですのでご注意ください。


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