
蒸し暑い日本の夏。年々厳しさを増す猛暑は、私たちの健康だけでなく、働く環境にも大きな影響を与えています。今、皆さんの職場では、熱中症対策が十分に講じられているでしょうか?
近年、熱中症による労働災害は増加傾向にあり、死亡災害も後を絶ちません。特に、建設業や製造業といった屋外・高温環境での作業が多い業種はもちろんのこと、オフィスや倉庫、工場といった屋内作業においても、エアコンの不備や換気不足などにより熱中症が発生するケースが少なくありません。
気候変動による気温上昇は今後も続くと予想されており、企業はより一層、積極的かつ具体的な熱中症対策を講じることが求められています。
労働契約法第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と明確に定められています。これは、一般的に「安全配慮義務」と呼ばれ、労働者が安全かつ健康に働ける環境を提供する企業の責任を意味します。
熱中症は、この安全配慮義務の対象となる「労働者の身体等の安全」を脅かす深刻なリスクです。実際に、労働安全衛生法においても、事業者は危険防止の措置を講じる義務があるとされており、厚生労働省は「職場における熱中症予防対策要綱」を策定し、具体的な予防策を提示しています。
作業環境管理の徹底
- WBGT値(暑さ指数)の把握と活用: 作業場所のWBGT値を定期的に測定・記録しましょう。WBGT値に応じて作業中止、休憩時間の延長、作業時間の短縮などの措置を講じる基準を設定します。
- 温湿度管理と換気: 屋内作業場では、エアコンや扇風機などを活用し、適切な温度・湿度を保ちましょう。窓の開放や換気設備の利用も重要です。
- 日よけ・遮光: 屋外作業では、日よけテントや遮光ネットなどを設置し、直射日光を避ける工夫を凝らします。
作業管理の実施
- 作業時間の短縮・休憩時間の確保: 連続作業時間を短縮し、定期的に休憩を設けましょう。休憩場所には、涼しい場所や冷水器などを準備します。
- 水分・塩分の補給: 作業員が自由に水分や塩分を補給できるよう、飲料水(スポーツドリンク等)や塩飴などを常備し、積極的に摂取を促しましょう。
- 作業服の工夫: 吸湿性・速乾性のある素材の作業服や、空調服などの利用を推奨します。
健康管理の徹底
- 健康状態の確認: 作業開始前や休憩時に、作業員の健康状態(体調不良、発熱など)を確認しましょう。特に、持病のある従業員や高齢者には注意が必要です。
- 緊急時の対応計画: 熱中症発生時の緊急連絡体制、応急処置、医療機関への搬送手順などを明確に定め、従業員に周知徹底しましょう。救急箱に冷却剤などを常備することも重要です。
- 熱中症に関する教育: 従業員に対し、熱中症の症状、予防策、緊急時の対応などについて定期的に教育・啓発を行いましょう。
労働衛生教育の実施
- 上記で述べた健康管理の一環として、労働者自身が熱中症のリスクを理解し、自己管理できるよう、熱中症に関する知識を習得させるための教育は不可欠です。
2025年の夏も、厳しい暑さが予想されます。熱中症対策は、もはや「やれば良い」ものではなく、「やらなければならない」企業の重要な義務です。労働者の安全と健康を守ることは、企業の持続的な発展にとっても不可欠な要素です。
まだ対策が不十分だと感じている企業は、この機会に改めて職場の熱中症対策を見直し、万全の体制を整えましょう。