厚生労働省は2024年9月に労働時間管理についてのリーフレットを公表し、一日ごとに一定時間に満たない労働時間を切り捨てる「丸め処理」をし、その分の賃金を支払わないのは労働基準法違反に当たると注意喚起をしました。
リーフレットでは、労基法違反とされる取り扱いとして3つの例を示しています。
●勤怠管理システムの端数処理機能を設定し、1日の時間外労働時間のうち15分に満たない時間を一律に切り捨て(丸め処理)、その分の残業代を支払っていない。
●残業申請は、30分単位で行うよう指示しており、30分に満たない時間外労働時間については、残業として申請することを認めておらず、切り捨てた分の残業代を支払っていない。
●毎朝、タイムカード打刻前に作業(制服への着替え、清掃、朝礼など)を義務付けているが、当該作業を労働時間として取り扱っていない(始業前の労働時間の切り捨て)。
端数処理の例外としては、1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものとして認められるとされています。
さて、これらに示された事例、自社でやっている方法に似ている、あるいは同じという会社さんもあるのではないでしょうか。手書きのタイムシートや紙のタイムカードで労働時間を管理し、手作業で集計していた時代には、15分丸めというのは多く見られた処理方法だと思います。しかし近年では労働時間の考え方はより厳しくなってきており、また勤怠管理システムの普及により、労働時間の集計が1分単位で簡単にできるようになりました。丸め処理に対する規制はより強まってくるでしょう。
また、上記の例の3つ目に挙げられている始業前の労働時間については、各社取り扱いに悩まれているところではないでしょうか。タイムカードを打刻した後、速やかに業務開始するのであれば問題ないのですが、早めに出社してコーヒーを飲んだりニュースをチェックしている時間もタイムカード打刻後は労働時間として扱わなければいけないのか?というご相談はよくあります。
リーフレットにも記載されていますが、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます。ですので、勤務中に決められた制服や作業着などを着用することが義務付けられていれば着替えは使用者からの命令によって行われるものとしてその時間は労働時間に含まれますし、毎朝始業時刻の10分前から朝礼を行っていて、それへの参加が必須であればその10分間は労働時間になります。ただし、早めに出社してもすぐに業務に取り掛からず、コーヒーを飲んで談笑したり、たばこを吸って一息ついている時間は使用者の指揮命令で行っているものではないため、労働時間とする必要はありません。
会社としては、労働時間の概念をはっきりさせ従業員にあらためて周知すること、また勤怠システムを利用して端数処理を行っている場合は労働時間の切り捨てになっていないかをこの機会に見直してみると良いでしょう。