少し前に「老後2,000万円問題」というフレーズが世間を騒がせていたと思ったら、最近では物価高騰により「2,000万円ではなく4,000万円必要だ!」などと言う専門家もいるようです。
実際に老後にいくら必要になるかということはここでは触れませんが、日本の年金制度における給付水準維持が少子高齢化によって厳しくなっている以上、各自がしっかり老後の備えをしておかなければいけないことは確かです。公的年金だけでは老後の生活を支えていけないことは明らかなので、国も資産形成にかかる税負担を軽減する等の対策を講じています。それが最近話題になっているNISAやiDeCoなどです。
今回は「iDeCoって聞いたことあるけど何?」という方に向けて仕組みを説明していきます。
まず「イデコ」という名称は愛称、つまりあだ名みたいなもので、正式には「個人型確定拠出年金」という仕組みです。
「日本版401k」という呼び名を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これは確定拠出年金の仕組みが米国で一般化した仕組みであり、その規定が米国内国歳入法の401条(k)項にあることに由来しています。つまり、401K=確定拠出年金のことを言います。また、DCという言い方をすることもありますが、これは英語表記Defined Contribution Planからきています。意味は401KもDCも同じです。いろいろな言い方があるのでわかりにくいですね。
確定拠出年金とは、毎月一定額の掛け金を積み立てて、将来受け取る年金額を積立金の運用実績にゆだねるタイプの年金のことです。
「将来受け取る年金額を積立金の運用実績にゆだねる」とはどういうことかと言うと、iDeCoで毎月いくらずつ積み立てる(拠出する)のか、そしてその積み立てる掛金をどのように運用するのかを自分で決め、その運用の結果によって将来受け取れる年金の額が決まるということです。
将来の受取額は確定していない一方で掛金(拠出額)は確定しているため確定拠出年金と呼ばれます。個人で掛金を積み立てるものは個人型、企業が積み立てるものは企業型です。
運用の方法については、元本保証型(定期預金)もしくは金融機関などの運営管理機関が選定する運用商品(株や投資信託)の中から自分で選びます。絶対に損をしたくない!と思う人は元本保証型の定期預金を選べばよいですし、多少のリスクをとってもやっぱり資産を増やしたい!と思う人は運用商品をよく見て気に入ったものを選びます。投資なんてしたことない、という人も多いと思いますが、iDeCoで選択できる運用商品は全般的にローリスクで安全に運用できるものが多くなっていますので、この機会に積極的に投資信託などについて勉強してみるのも良いですね。(投資についての一般的な考え方については項目をあらためて後日投稿します)
さて、ここまでの説明でiDeCoは毎月一定の金額を積み立てるもので、定期預金や投資信託の運用などで将来に備えて資産形成をする仕組みだということはお分かりいただけたと思いますが、「iDeCoと自分で貯金や投資をするのと何が違うの?」という疑問が出てきますね。
iDeCoを活用する最大のメリットはとにかく節税効果が高いということです。
まず、掛金が全額所得控除になります。…という説明は聞いたことがあるけど意味が分からない方、いらっしゃいますよね。説明します。
税金を計算するときに「収入」と「所得」は分けて考えます。「収入」とは会社からもらう給与や、店舗などを営んで得る売上のことを指します。給与で言ったら「額面」つまり総支給額、売り上げで言えば総売上高です。「収入」から「必要経費」を差し引いたものが「所得」になりますが、サラリーマンの場合は「必要経費」を個別に計算せず、一定の式に当てはめて収入から所得を計算します。この際に給与の収入から差し引く「必要経費」に該当するものを「給与所得控除」といいます。
税金の計算は「収入」ではなく「所得」をもとに計算しますので、この「所得控除」が多ければ多いほど課税対象となる「所得」を少なくすることができ、その分税金が安くなるというわけです。
仮に毎月1万円を積み立てると年間で12万円掛金を拠出することになります。これが全額所得控除の対象になりますので収入から12万円を差し引ける、つまり所得が12万円少なくなってその分所得税が安くなります。例えば所得税率10%の人であれば、所得税が12万円×10%=1万2千円、住民税も12万円×10%=1万2千円で合計2万4千円の節税効果があります。これは大きいですよね。
また、運用によって発生した運用益についても、通常であれば約20%の税金がかかるところ、iDeCoでは非課税になります。仮に運用益が10万円出たとして、通常であれば税金で2万円取られるところこれがかからないというのも非常に大きなメリットです。
さらに、「iDeCo」は年金か一時金で受取方法を選択することができ(金融機関によっては、年金と一時金を併用することもできます)、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となりますので、受け取りの際にも大きな控除が受けられます。
普通に自分がもらった手取り給与の中から毎月一定額を定期預金口座に貯蓄するだけではこの節税効果は得られません。iDeCoを使わないのは非常にもったいないのです。国は国民が自ら老後の備えをすることを推進するためにこれだけの税優遇を用意したということです。
ここまでiDeCoの概要とメリットをお話してきましたが、もちろんデメリットもあります。
次回はiDeCoのデメリットについてお話しします。