コロナ禍で急速に広まったテレワークですが、「やはり対面でのコミュニケーションが必要だ」「業務効率が落ちた」などの理由から従業員を出社させる動きも少なからずあります。しかし、従業員が出社を拒否した場合、会社としてはどのように対応すべきでしょうか。
個別の労働契約において、就業の場所が「自宅等」とされていて出社することが前提とされていないケースでは、従業員に出社してもらうためには労働契約における就業の場所を変更することが必要になるため、原則として労働者と使用者の合意が必要です。そのため、テレワークを終了して出社に切り替えるにはあくまでも対象となる労働者の同意を得る必要があり、会社からの命令で出社させることは困難と考えられます。
一方、本来は出社して事業場で勤務することを前提とする労働契約を締結しており、感染症拡大等に対応するため業務命令、あるいは業務上の要請によってテレワークを実施していた場合は、テレワークを終了して出社を命じることも業務命令で行うことが可能でしょう。
しかしその場合でも、使用者としては従業員に対してテレワークではなく出社して勤務することの必要性や合理性を説明し、理解を求めることが大切です。出社させることについて全く合理性がない、あるいは一部の従業員を狙い撃ちして出社を命じたなどの事情がある場合、当該出社命令が業務命令権濫用に該当し無効と判断されてしまいます。いちどテレワークを導入したにもかかわらず再度出社を命ずるということは、業務効率の低下など、業務に支障が出ているという事実が認められるためと考えられますので、しっかりと従業員に説明し理解してもらうよう努めてください。