新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行し、「アフターコロナ」の時代に突入しました。新型コロナの感染拡大に伴い急遽テレワークを導入した会社は多いと思いますが、そのような会社の中にはテレワークに関する規程が何もない会社もあるでしょう。
緊急的にテレワークを導入し運用することに関して、テレワークに要する費用を従業員に負担させないのであればテレワークに関する規程の作成は法律上求められていません。しかし、恒常的にテレワークを実施していく場合はルールを明確化し規程を設けておいたほうがよいでしょう。
今回は、テレワーク規程を作成する上でのポイントについていくつかお話します。
●テレワークの対象者と許可基準
コロナ流行前においては、テレワークに関する定めがあっても対象者は「育児、介護や自身の傷病等で出勤が困難な者でテレワークを希望する者」等のように出社や通勤の負担について配慮が必要な場合に限られているケースが少なくありませんでした。しかし、コロナ禍を経て、テレワークを前向きにとらえ今後も継続してテレワークを認める方針に変更した会社も多いでしょう。その場合は、「テレワークを希望する者」「会社からテレワークを指示された者」を対象とする等、幅広く対象者を認めると同時に、テレワークを「許可制」として、テレワークをすることが不都合な場合(テレワーク勤務者が他の従業員との協調を保つのが難しい場合や、職務専念義務を尽くしているか疑問がある場合など)は許可を取り消すことができるような仕組みづくりをしておくことが望ましいと考えます。
●就業の場所
テレワークの際の就業場所としては、労働者の自宅で就業する在宅勤務や労働者の所属する事業場以外のオフィスで就業するサテライトオフィス勤務、また労働者が臨機応変に就業場所を選択できるモバイル勤務などがあります。
就業場所を自由にすることで様々な境遇の労働者に働いてもらうことが可能になりますが、通常のオフィスで勤務する場合と比べて第三者(在宅勤務の場合は家族)に業務情報が漏洩するリスクが高まりますので、必要に応じて就業場所を会社が指定する場所に限定することも考えられます。
●費用負担
テレワークを実施する場合、勤務時間中にかかる水道光熱費や通信回線利用料を会社が支払わない限り、これらの費用を従業員が負担していることになります。労働者に経済的負担を課す場合は、当該事項を就業規則に必ず定める必要があります。(労働基準法第89条5号)
厚生労働省の「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」や「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」によると、パソコンなどの機器は会社から貸与(費用は全額会社負担)、通信回線利用料や水道光熱費は個人使用分と業務使用分の切り分けが難しいことから個人負担か定額手当を支給しているケースが多いようです。
テレワーク勤務者にのみ過度な負担が発生しないようルールを検討し、会社負担分と個人負担分を明確に定めておきましょう。
●通勤手当
オフィス勤務の従業員に対しては通勤手当として公共交通機関の定期代や自宅とオフィスの間の距離に応じて毎月一定額のガソリン代を支給するケースが多いですが、テレワークを実施する場合は出社の頻度により通勤手当の計算方法を変更する場合があると考えられます。賃金の計算方法について変更がある場合は就業規則へ定めることが必要となります。
●勤務時間・時間外労働
テレワークを実施する場合の大きな課題の一つが労働時間管理です。また、仕事と私生活の区分が曖昧になり、長時間労働が発生するリスクもあります。
テレワークの場合、労働者の労働時間管理を行う上長が当該労働者の労働時間を現認して確認することができないため、労働時間の把握・管理が困難になります。そのため、時間外労働を行うことについて労働者の裁量にゆだねてしまうと労働時間管理が適切に行われず、長時間労働を助長させてしまうリスクもあります。
労働時間管理については、出退勤の時刻をメールなどで報告させる、パソコンのログイン記録をもとに労働時間を把握する、勤怠管理システムを導入するなどの方法が考えられます。
また、時間外労働は原則禁止として事前の申請による許可制にする等、長時間労働を防ぐルール作りについても検討しましょう。
テレワーク実施のための規程作りについていくつかのポイントをご紹介しましたが、もっと具体的に自社のルール作りについて相談したい、労働時間管理の課題を解決したい等のご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。