
5月も終わりに近づき、本格的な夏を前に、そろそろ今年の夏の休暇計画を立て始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。人事労務ご担当者の皆様におかれましては、従業員の有給休暇の取得状況について、課題を感じていらっしゃるかもしれません。
今回は、多くの企業が抱える「有給休暇の取得促進」というテーマに焦点を当て、特に有効な手段である「計画的付与制度」について、2025年5月末時点の状況と、企業として今から取り組むべきメリットを解説します。
「有給休暇、取りづらい…」の課題を解消するために
「有給休暇は与えたけれど、なかなか取得してくれない」「特定の従業員に取得が偏ってしまう」といった悩みは、多くの企業で聞かれる声です。日本の有給休暇取得率は国際的に見ても低い水準にあり、従業員の心身のリフレッシュやワークライフバランスの実現は、企業の重要な課題となっています。
また、2019年4月からは、すべての企業で年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、年間5日の有給休暇を必ず取得させることが義務付けられています。この「年5日取得義務」を達成するためにも、企業は計画的な取り組みが必要です。
計画的付与制度とは?
有給休暇の計画的付与制度とは、労使協定を締結することにより、企業が従業員の有給休暇をあらかじめ指定した日に取得させる制度のことです。これにより、企業は計画的に業務を調整し、従業員は気兼ねなく有給休暇を取得できるようになります。
この制度には、個別に有給休暇を指定する方法だけでなく、以下のような様々なパターンがあります。
- 全社一斉付与: 夏季休暇や年末年始などに一斉に付与する。
- 部署ごとの交代制付与: 各部署で取得時期をずらして付与する。
- 個人別付与: 各従業員の意見を聞きながら、個別に取得日を決める。
この制度を導入することで、企業側は「年5日取得義務」を確実に達成しやすくなるだけでなく、業務の平準化や生産性向上にも繋がる大きなメリットがあります。
2025年、計画的付与制度の活用がさらに重要になる理由
- 「年5日取得義務」の確実な達成手段として 依然として「年5日取得義務」の達成に苦慮している企業は少なくありません。計画的付与制度は、労使協定に基づき企業が取得日を指定できるため、この義務を確実に履行するための最も効果的な手段の一つです。
- 人手不足解消とエンゲージメント向上への貢献 少子高齢化による人手不足が深刻化する中で、従業員が安心して働ける職場環境の整備は、人材定着に不可欠です。有給休暇の取得促進は、従業員のストレス軽減やリフレッシュに繋がり、結果的にエンゲージメントの向上や離職率の低下に貢献します。計画的付与制度は、「有給が取りやすい会社」という企業イメージ向上にも繋がるでしょう。
- 業務の平準化と生産性向上 従業員が各自バラバラに有給休暇を取得する場合、業務の属人化や繁忙期の対応に課題が生じることがあります。計画的付与制度を導入すれば、あらかじめ休業日を決められるため、業務の割り振りやスケジュール調整がしやすくなり、結果として業務の平準化と生産性向上に繋がります。
今からできる計画的付与制度導入へのステップ
1. 労使での話し合いと労使協定の締結
計画的付与制度を導入するには、労働組合がある場合は労働組合と、ない場合は従業員の過半数を代表する者と労使協定を締結する必要があります。導入の目的やメリットを十分に説明し、従業員の理解を得ることが重要です。
2. 対象となる有給休暇日数の決定
従業員に付与される有給休暇のうち、5日を超える部分について計画的付与の対象とすることができます。例えば、年10日有給が付与される場合、5日を超える部分の5日が計画的付与の対象となります。
3. 従業員への周知と協力依頼
制度導入後も、従業員に対して制度の内容や取得義務について継続的に周知し、協力を求めることが大切です。特に、計画的付与で指定されなかった残りの有給休暇についても、積極的に取得を促す雰囲気づくりが重要です。
まとめ
有給休暇の取得促進は、従業員の健康とモチベーションを高め、企業の生産性向上に直結する重要な経営戦略です。特に計画的付与制度は、「年5日取得義務」の確実な達成だけでなく、業務効率化や従業員エンゲージメント向上といった多岐にわたるメリットをもたらします。
「有給休暇、取りづらい…」といった従業員の声を解消し、より働きやすい職場環境を築くために、この機会に計画的付与制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。当事務所では、制度設計から労使協定の作成、従業員への説明会開催まで、トータルでサポートさせていただきます。どうぞお気軽にご相談ください。