
近年、働き方の多様化が進み、複数の事業所で勤務する、いわゆる「ダブルワーク」や「副業」といった働き方を選択する方が増えています。しかし、2か所以上の事業所で働く場合、社会保険の加入や手続きはどうなるのでしょうか?
まず、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件は、それぞれの事業所における労働時間や労働日数、賃金額などが一定の基準を満たすかどうかで判断されます。原則として、それぞれの事業所において加入要件を満たす場合は、両方の事業所で社会保険に加入することになります。
以下のような働き方をする人が主に対象となります。
・二つの法人の代表者
・一社で代表者をしておりかつ他社で正社員として勤務している人
・二社で正社員として勤務している人
・一社で正社員として勤務しており、かつ他社でパートタイマーとして勤務し加入要件を満たしている人
・二社でパートタイマーとして勤務しておりそれぞれの会社で加入要件を満たす人
二つの会社で正社員として勤務しフルタイムで働く人は多くはないと思いますが、副業が広く解禁され、社会保険の適用範囲もより広まってきていることから、本業と副業の片方あるいは両方でパートタイマーとして働く人でもそれぞれの会社で社会保険の加入要件を満たす可能性があります。
2か所以上の事業所で社会保険の加入要件を満たす場合、事業所のうち一つを「主たる事業所」として選択し、そちらの事業所を通じて社会保険の加入手続きを行います。どの事業所を主たる事業所とするかは勤務者が自由に選択できます。
新たに被保険者となる事業所から資格取得届を提出した後、主たる事業所を管轄する年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。また、主たる事業所が協会けんぽではなく健康保険組合の場合は健康保険組合と年金事務所の両方に提出します。
二以上勤務者が届出を行うと保険証の番号が変わりますので、旧保険証は使えなくなります(マイナ保険証を除く)。二以上勤務者に該当した日以降は旧保険証を使わないようにしましょう。特に、保険者(協会けんぽ、健保組合)が変わる場合に変更前の保険証を使用してしまうと療養費等の精算手続きが発生することになりますので注意してください。
また、保険料はそれぞれの事業所から受ける報酬の額に応じて按分され、それぞれ給与から控除されます。決定した保険料額は、主たる事業所を管轄する事務センターからそれぞれの事業所へ通知されます。
二以上勤務者は他の勤務者と事務手続きが異なっていますので、適切に対応できるよう注意が必要です。手続きに関して不安があれば専門家である社労士にご相談ください。