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退職・解雇トラブルを防ぐポイント


年度末は、転職や異動のシーズンでもあります。それに伴い、退職や解雇に関する相談が増える時期です。
「急に退職を申し出られた…」
「問題社員を辞めさせたいが、どうすればいい?」
そんな悩みを抱える人事担当者の方に向けて、退職・解雇のトラブルを防ぐポイントを解説します。

1. 「退職します!」はいつまでに言うべき?

従業員が「退職したい」と言った場合、会社はどこまで引き留められるのでしょうか?

🔹 法律上のルール
民法では、労働者が退職を申し出た場合、2週間後に退職できるとされています。(民法627条)

🔹 就業規則が優先?
就業規則に「退職は1カ月前までに申し出ること」と記載している場合、基本的にはそれに従います。ただし、会社独自のルールである就業規則よりも法律(民法)の方が強いため、従業員が2週間で辞めると主張すれば、認めざるを得ないケースもあります。

🔹 会社ができること
・引き継ぎ期間を考慮し、適切なタイミングでの退職をお願いする
・退職時のルールを明確にしておく(退職願・退職届の扱いなど)
・重要ポストの人材には、早めの引き留めや代替案を提示する

2. 「辞めてもらいたい人」を辞めさせるには?

会社としては、「できれば退職してほしい」というケースもあるかもしれません。しかし、安易に「辞めてくれ」と言うことは不当解雇として訴えられるリスクがあるため避けなければなりません。

🔹 解雇は最終手段
解雇を正当化するには、以下の要件を満たす必要があります。
・客観的に合理的な理由(重大な問題行動、勤務態度不良など)
・社会通念上の相当性(解雇以外の選択肢がないこと)
しかしながら実際にこれらを満たすと認められることは容易ではなく、解雇を正当に行うことはかなりハードルが高いと認識しておきましょう。現実的には従業員に納得してもらったうえで円満に辞めてもらうことを目指します。

🔹 円満に辞めてもらうための選択肢

  1. 業務改善指導(まずは改善の機会を与える)
  2. 配置転換・職務変更(別の業務で適性を見極める)
  3. 退職勧奨(本人に自主的な退職を促す)

最終的には辞めてもらいたいという場合でも、まずは業務について改善の機会を与え、会社としてどうしてほしいかをしっかり伝え指導していくことが肝要です。指導や面談を行いきちんと記録を残します。

また、中小企業ではなかなか難しいかもしれませんが、配置転換等を行うことができるかも検討します。

配置転換も難しく、繰り返し業務指導や改善に向けての取り組みを行ったが成果が上がらずこれ以上の業務遂行が難しいという判断に至れば退職勧奨となるでしょう。これはあくまでも退職の「勧奨」ですので、最終的には本人が自主的に退職することが求められます。会社が無理やり退職届を書かせることはあってはなりません。なぜ退職勧奨に至ったのか、きちんと納得してもらえるよう丁寧な説明が必要です。

3. 退職時に会社がやるべきこと

退職が決まったら、会社として適切な手続きを進めることが重要です。手続きを怠ると、後々トラブルにつながることもあるため、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。

① 退職に関する書類の確認・回収

退職時には、労働者から正式な書面を受け取る必要があります。

📌 退職願・退職届の提出(※会社による)

  • 退職願(撤回可能):辞めたい意向を示すもの
  • 退職届(撤回不可):退職が確定したもの
  • 退職の意志の申出は口頭でも有効であるが、会社が受理した証拠を残すため書面やメールでのやり取りを推奨

📌 誓約書(必要に応じて)

  • 退職後の競業避止義務(同業他社への転職制限)
  • 機密情報の保持義務
  • 貸与物(PC・スマホなど)の返却義務

② 社会保険・雇用保険の手続き

📌 健康保険・厚生年金の資格喪失届(退職日の翌日以降5日以内)

  • 退職者が国民健康保険に加入する場合 → 健康保険の資格喪失証明書を発行
  • 任意継続を希望する場合 → 退職者に案内(退職後20日以内の手続きが必要)

📌 雇用保険の資格喪失届(退職日の翌日から10日以内)

  • 離職票の発行(希望者のみ) → ハローワークでの失業給付申請に必要

📌 住民税の手続き

  • 住民税は退職月によって「一括徴収するか、本人に納付させるか」を選択(退職が1~5月の場合は原則として一括徴収)
  • 特別徴収に係る給与所得者移動届出書を作成

③ 最終給与の計算と精算

退職者の給与・手当を正しく計算し、未払いが発生しないようにしましょう。

📌 最終給与に含めるもの

  • 基本給・残業代(未払いがないか確認)
  • 通勤手当の清算(過払いの調整)
  • 賞与・退職金(支給規定に基づく)

📌 有給休暇の扱い

  • 消化希望がある場合 → 業務に支障がなければ取得を認める
  • 未消化の場合 → 買取義務はないが、就業規則や慣例による

④ 会社貸与物の返却と情報管理

貸与物の未返却や情報漏えいを防ぐため、リストを作成し、確実に回収しましょう。

📌 返却物のチェックリスト
・ 社員証・入館証・名刺
・ PC・スマートフォン・タブレット
・ 業務用のアカウント・パスワードの削除
・ 書類・マニュアル・USBメモリなど

📌 機密情報の管理

  • 退職者のメール・社内システムのアクセス権限を即時削除
  • 取引先への連絡(担当者変更のお知らせ)

⑤ 退職後のフォロー

退職後にトラブルが起こらないよう、必要なフォローを行います。

📌 取引先・社内への引き継ぎ

  • 退職者の担当業務を整理し、引き継ぎを完了させる
  • 退職後の問い合わせ窓口を明確にする

📌 離職票・源泉徴収票の送付

  • 離職票はハローワークで手続き後、退職者に送付
  • 源泉徴収票は年末調整の関係で必須(転職先に提出)

まとめ:退職手続きの流れ

退職や解雇は、企業にとって避けられない問題ですが、対応を誤るとトラブルにつながります。
📌 退職の申し出は就業規則と法律を確認
📌 解雇は慎重に!まずは改善のチャンスを
📌 退職手続きは漏れなくスムーズに

「このケースはどう対応すればいい?」といった個別のご相談も承りますので、お気軽にお問い合わせください。


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